11月21日(土)13時50分より、令和2年度教文研教育ウェビナーが開催されました。香川県教育文化研究所からは北村顕吾理事長はじめ多くの先生方が聴講しました。
講師として、工藤勇一氏(学校法人堀井学園 横浜創英中学・高校 校長)をお招きし、「学校教育を本質から問い直す」と題して、日本が抱える真の課題やその解決方法などについて詳しく講演いただきました。
まずはじめに、前任校の麹町中学校で取り組まれた「定期考査・宿題の廃止(単元テスト・再テスト制)」「固定担任制の廃止(全員担任制)」「服装・頭髪指導の廃止(生徒・保護者の経営参画)」「AI(人工知能)による数学指導(個別最適化・アクティブラーニング)」について話してくださいました。
次に、話題となった主な取り組みを踏まえて、日本が抱える真の課題として、「①誰もが当事者意識を失っている」「②手段が目的化している」ことについて詳しく話してくださいました。
これまでの学校教育は、「何を教えて(カリキュラム)どう教えるか(教え方)」という教師の立場から見てきたのだが、それは学力の低下、教育の機会均等の格差を恐れ、結果として子どもたちの自律性・主体性の格差を生んでしまうことにつながっていると述べられました。本来の目的である「自律した児童生徒を育成する」ではなく、「基礎学力を身につけさせる」になってしまっている現状を問題視されていました。そして、非効率であるために、児童生徒を、教員を、学校を疲弊させていることや、タイムマネジメントの視点からも時代の変化についていけない現状が浮き彫りになっており、すでに既存の学びのシステムは限界にきていることを説明してくださいました。
これからの学校教育は、「何を学んで(カリキュラム)どう学ぶか(学び方)」という学習者主体で進めていく必要があることを提言してくださいました。「画一的な教育」から「多様な教育」へ、多様な子どもたちに個別最適化した教育を展開していくことで多様な人材を生む教育に転換することの重要性を述べられました。その一例として、ICTテクノロジーを活用することが必要不可欠であることもおっしゃいました。
最後に、解決方法(当事者意識と対話)として「①まずは最上位目標を合意する」「②目標に戻って対話し手段を決める」ことについて説明されました。今日、各学校で掲げられている学校目標は、そもそも目標としてふさわしい目標なのかを見直す必要があると述べられました。ホンモノの最上位の目標「【個人の目標】(児童生徒)人が社会の中で変化に対応しながらよりよく生きていける」(個の幸せ)「【社会の目標】(学校)よりよい(持続可能な)社会をつくる」(社会の幸せ)ために学校教育が展開されていることを、全て当事者として児童生徒や保護者、地域、教員が合意(理解)することが重要であることをおっしゃいました。また、その目標を実現するためのあらゆる手段を対話を通して決定(自己決定)できるようにすることの必要性についても提言されました。
新しい時代における日本型学校教育の在り方や考え方を示してくださり、とても貴重な講演を聴くことができました。工藤先生、本当にありがとうございました。